芳川町 町内会
②蛇抜け伝説
  むかし、吉浜村の高平というところに、長者が住んでいました。
長者にはたいそう美しい娘がいて、長者は目の中に入れても痛くないほどかわいがっていました。
 娘はだんだん成人して、ますます美しくなり、あちらからもこちらからもお嫁さんにほしいと申しこまれましたが、娘は、どうしてもお嫁にいくのはいやと、首を横にばかりふっていました。
 長者は、娘にそのわけを尋ねましたが、娘はなかなかそのわけを話してくれません。
 娘には好きな男の人がいました。その人は立派な身なりでやさしく、毎夜毎夜娘の部屋に通ってきていました。
 娘はある日、乳母にだけそのことを話しました。おどろいた乳母は、さっそく長者に告げました。長者もたいそうおどろき、大切な娘が好きだというなら結婚させてもやろうが、その若者はどこのお人だと娘に聞きましたが、娘もどこの人か知りませんでした。
 長者はすっかり心配になって、「今度あったときには、きっと聞いておきなさい」と娘にきつく言いました。
 娘は言われたとおり、若者に尋ねましたが、若者はやさしくほほえむだけで答えませんでした。
 娘の口から若者の住む所も名前も聞きだせない長者は、ある日、木綿針に糸を通し、若者の着物のすそにぬいつけておくようにと、娘にいいつけました。
 夜明け近く、娘の部屋から若者が帰ると、長者は一すじの木綿糸の行方をつけて行きました。糸は娘の部屋の欄間をとおって、軒先に出て、月の光で明るい野道にのびていました。
 長者が糸を追って竜田の川ぶちまでくると、急に糸が乱れからまっていて、一匹の大蛇がのどに針を突出てて苦しんでいました。
 長者はそれを見ると、ああ、と嘆き悲しみました。そして、ふたたび姿を見せるなよと、のどの針を抜いてやると、大蛇は衣が浦の海の上をわたって、対岸の生路村の方へ行きました。
 蛇抜けとよばれるようになったところには、海をいつまでもみつめる娘と、娘を見守るように立つ長者の姿が、やがて光りはじめた朝日に染って、いつまでも立ちつくしておりました。
  
























































































































           






















































































⑧呉竹の井戸
 切り立った海岸は、白い波が押し寄せては砕けていた。このあたりは入り江の奥で、反対の西の低い岸辺が近くまで迫っていて、北に行くにしたがってさらに狭くなり、河口になっていた。
「水を積み込んで、漁にいくぞ。」漁師の長老が、まわりの船の漁師たちに呼びかけた。
 漁師たちの漕ぐ舟は、切り立った岸辺に向きを変えた。高い岸の上には、お寺の屋根が見えていた。岩場の岸には水の流れがあり、その源は崖の岩の割れ目にあった。
「あいかわらず、うめえ水だ。」
 岩から吹き出た水を両手に受け、漁師たちは次々に飲み干した。どんぶりやお椀で飲む者もいた。「さあ、はよう水をくめ。水桶にいっぱいになるまで、どんどん入れよ。」
 いくつも飲む水桶に、ひしゃくやお椀で次々に水を汲み、いっぱいになると舟へ運びこんだ。
「さあ、出かけるぜ。」
何そうもの舟は、いっせいに漕ぎ出した。何日もたった。
 「大変だ。岩の水が出ていない。こりゃどうしたことだ。」
見つけた漁師は、港に行き知らせた。
「こりゃ困ったことだ。確かめに行こう。」みんな舟で水場にやつてきた。水は止まっていた。わずかに、崖の下の低い石の間から、水が出ていた。「これじゃ、水はくめやしねえ。」「どうしたらいいか、知恵者の和尚さんに聞いてみよう」
 さっそく、お寺の和尚さんもきた。「ここを掘ってみるか。そうすりゃ水が出るかもしれんぞ。」和尚さんはそう言った。漁師ちは、皆んなうなずいた。「そうだな、そこへ大きな土管でも埋めておくか。」漁師のひとりが言った。
「井戸を掘るっていうことか。」長老の漁師が言うと、さっそく井戸を掘ることになった。やがて井戸には澄んだ水がたまり、漁師たちが再び使うことができるようになった。
 お寺の竹藪に囲まれた井戸は、和尚さんのお茶の水にも使われ、茶室『呉竹庵』と命名していたためか、この井戸を『呉竹の井戸』と呼ぶようになった。
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